横浜美術館で開かれている「ドガ展」へ行って来ました。
日本で21年ぶりに開催されたドガの大回顧展の一番の目的はもちろん「エトワール」です。この絵のレプリカや宣伝に使ったポスターなどはあちこちで良く見かけていましたが、本物の絵は初めてで、出会うのを楽しみにしていました。「エトワール」は日本で初公開という事でした。その所為かこの絵の前だけは鑑賞する人が多くて皆さんの頭をよけながら人混みを避けながら私も時間をかけて観て来ました。
※ドガ展チケットと出品リスト。
7月27日新国立美術館での「オルセー美術館展」ではドガの「階段を上る踊り子」を観ました。インパクトのある絵でした。エトワールより大きな号数の様に感じました。お部屋を入って真っ先に目に飛び込んだ縦長の絵で、チュチュを両手で持って階段を駆け足で上がる可愛い踊り子の様子を今も忘れられないほど印象が強かったですがそれに比べると今回の「エトワール」は思っていたよりずっと小さい号数(58.4cm×42cm)でした。
「エトワール」
エトワールはフランス語で星と言う意味。パリ・オペラ座でプリシパル(主役を踊る踊り子)の中で特に花形に与えられる称号です(最高位)。ドガの確かなデッサン力によってスポットライトを浴びて踊るエトワールの一瞬の動きが描かれています。稽古場や舞台裏の踊り子たちを好んで描いたドガの作品の中でこの作品は上演場面を描いた数少ない作例のひとつだそうです。大胆な対角線の構造図で構成して高い位置のあるボックス席からオペラグラスを通して舞台上の踊り子を見ているような視点でとらえていることが分かります。
当時の踊り子の世界が娼婦の世界とそう異なるものでなかった事を我々に思い出させる「絵」でもありました(このことについて2009年9月29日UPしています)。華麗に踊るエトワールと舞台の裏側又その裏の当時の社会的な背景など切なく思ったりしますね。
ドガはパステルをつかってチュチュの軽やかさなどを表現したと言われています。画家には致命傷である「眼」の病気を患ったドガはパステルや写真機に持ちかえることに挑戦をしたそうです(会場内のビデオ説明)その「エトワール」の絵がパステルをつかったもの・・・?? と思いましたが帰って前回のオルセーの図録と比較すると油彩とパステルの違いが良く分かります。「階段・・・」のほうは油彩で描かれたものでした。
「バレエの授業」
この作品は1872年のころからからドガが描き始めたオペラ座の稽古場でレッスンする踊り子を描いた一連の作品の一つですが、後ろ向きの踊り子のウエストにきりりと結んだグリーンのリボンやチェチェのはりそして鍛えられた踊り子の貝殻骨付近の陰影・・・・。リアリテイと独創性の探究心が溢れるこの作品も溜息でした。「エトワール」と同じように素敵でした。
ポストカードはこちらの方を買って来ました。
今回の展覧会では「オルセー」「ボストン」で鑑賞した絵で重複したものも多かったのですが一年のうちで著名な絵に二度も会える事は今迄にないことでした。
今年の秋はスペイン・マドリードにあるプラド美術館を訪れる計画をしていました。10月末の思いもかけない義母の肋骨骨折で残念ながらキャンセルをいたしましたが、これがかえって良かったのかも知れません。ストレスの解消に時間を作っては意欲的にあちこちの近場の美術館巡りをしました。思いもかけずに普段なら出掛けなかっただろう展覧会にも足を運んで新しい、いくつかの発見もありましたから・・・。
今年最後の締めくくりが「ドガ展」で、来年もぜひ見ておきたいと思う美術展のスケジュールがつぎつぎと発表されています。多いに楽しみでありま~~す。